
投資判断するにあたり、様々な指標や財務諸表の分析をされるかと思います。そんな時に「英語3文字で略した用語が多すぎる!」「利益の種類も多すぎる!」「とにかく用語が多すぎ!」と思われた方も多いのではないでしょうか。
せっかくですので良く使う用語と、計算式などについて本記事で一気に解説したいと思います。頻出用語についてこの記事を見れば全て理解できるという状態を目指したいので
・説明がわかりにくい
・この用語も良く使うけど記載されていない
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株式投資をする上で覚えておくべき基本的なことを中心に記載しましたので、言葉の意味に自信がない人は、この機会に是非覚えてみてください。
目次
投資判断指標
まずは投資判断指標から記載します。
英語の大文字が3つ並んでいるものが多すぎてややこしいですよね。そもそも何の略なのかを知ると覚えやすいと思うので、それも含めて記載するようにしますね。
PER
Price Earnings Ratioの略で株価収益率とも呼ばれます。株価が企業の利益水準に対して、割安か割高かを判断する尺度として使います。
計算式:PER=株価÷1株当たり純利益(EPS)
たまにPERが30倍や40倍の銘柄は高いという言葉を聞きますが、PERが何倍だから割安、割高という絶対基準はありません。業種ごとにPERの水準は異なりますので、同業種間や似ている企業間での比較に用いるのが一般的です。
EPS
Earnings Per Shareの略で一株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるかを表します。
計算式:EPS=税引後当期純利益÷発行済株式数
私はグロース投資において重要な指標として使っており、『成長銘柄を見極める3つのコツ』でも紹介しましたので参考にしてみてください。
BPR
Price Book-value Ratioの略で、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを表します。
計算式:PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)
株価が企業の資産価値に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。PBRが低いほうが割安と判断されます。PBR=1倍が株価の底値のひとつの目安とされています。ただし、BPRが1倍を切っている株は長年BPR1倍以下を推移し続けることも多く、割安だからと安易な取引は避けた方が無難です。あくまでも目安。
BPS
Book-value Per Shareの略で企業の安定性を見る指標。
計算式:純資産÷発行済み株式数
BPSが高ければ高いほど、その企業の安定性は高いと見られますが、これも業種やビジネスモデルなどによって基準が変わります。
ROE
Return On Equityの略で自己資本利益率とも呼ばれます。
計算式:ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
近年では最も重要視される財務指標です。ROEは株主が拠出した資本(自己資本)を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標です。高ければ高いほど効率良い経営をしていると判断されます。
ROA
ROEと似ていますね….。Return On Assetの略で和訳は総資本利益率です。
計算式:ROA(%)=当期純利益÷総資産×100
ROEと比較すると分母が自己資産から総資産に変わりました。
会社が持っている資産を利用して、どの程度の利益を上げているかを示す指標です。
例
A社:当期純利益10億円 総資産200億円
B社:当期純利益30億円 総資産300億円
A社のROAは5%、B社のROAは10%です。B社の方が資産を効率的に活用して利益を稼ぐことができていると見ることができます。
配当性向
配当性向とは、純利益から、どの程度の配当金を支払っているかを表したものです。
計算式:配当性向(%)=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益×100
特に高配当銘柄への投資をする方は要チェックです。配当性向が低い場合は、まだ増配の余地があります。しかし、配当性向が極端に高い場合は、利益が減った時に減配のリスクがあります。
例えばJTは今期の配当性向は89.6%を予想しており、もう増配余地がないどころか減配リスクが高いと言える状態です。詳しくは過去記事をご覧ください。
損益決算書に関する用語
一口に「利益」と言っても、「売上総利益」「経常利益」「当期純利益」などたくさんあります。特に代表的なものを一度整理してみましょう。
損益計算書
そもそも損益計算書とはなにか。
損益計算書とは、会社の利益を知ることができる決算書類です。「Profit and Loss Statement」を略して「P/L」と呼ばれることもあります。
損益計算書は、収益・費用・利益が記載されていますので、会社が「費用を何にどれだけ使って」「どれだけ売上が上がり」「どれくらい儲かったのか」を理解することができます。
図解してみるとこんな感じになります。

売上総利益
売上総利益は「粗利」とも呼ばれ収益性の判断に用いられます。
計算式:売上総利益=売上高-売上原価
売上原価は、商品を仕入れたり、製造したりするときにかかる費用のことです。業種によっては人件費が含まれることもあります。
営業利益
本業における利益のことです。営業活動にあたりオフィスを借りたり、マーケティング費用をかけるなど様々な費用がかかります。これらを売上総利益から差し引いた利益が営業利益になります。
計算式:営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
販売費 :マーケティング費用など
一般管理費:オフィス賃料や人件費など
販売費と一般管理費をあわせて「販管費」とも呼びます。
経常利益
経常利益とは、企業が事業全体から経常的に得た利益のことです。事業全体から得た利益ですので、本業以外の財務活動などによる収益と費用も反映させます。
計算式:経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
本業で営業利益を出していても、借入金の返済や利息の支払いの負担が大きい場合は、経常利益は小さくなります。逆に預金や貸付金の利息などがある場合は経常利益が大きくなります。
税引前当期利益
法人税などの税金を支払う前の稼いだ利益のことです。
経常利益に臨時的な利益を加算したり、臨時的に発生した損失を差し引いて計算します。
計算式:税引前当期利益=経常利益+特別利益—特別損失
特別利益:固定資産売却益や株の売却益など
特別損失:火災損失や株の売却損など
当期純利益
当該決算期における、最終的な利益を表す。税引前当期純利益から「法人税、住民税および事業税」と税効果会計により生じる「法人税等調整額」を差し引いた利益のこと。
計算式:当期純利益=税引前当期純利益-(法人税+法人住民税+法人事業税)
貸借対照表に関する用語
次は貸借対照表についてですね。滑舌が悪い私は「たいしゃくたいしょうひょう」と噛まずに言える自信がないので、「Balance Sheet」の略である「B/S」と呼びます。
貸借対照表
貸借対照表とは、企業の財政状況を示す書類です。
下記のように左側(借方)には資産を、右側(貸方)には負債と、それらの差引である純資産があります。

資産には流動資産と固定資産の2種類があります。
また、負債も流動負債と固定負債の2つに分けることができます。
それぞれ解説します。
流動資産
読んで字の如く、流動的な資産のことです。
具体的には「1年以内に手元現金になるもの」か「営業上の資産」に分類できます。例えば、現預金や売掛金、商品などのことです。
固定資産
既にお分かりの方もいると思いますが
「1年以上の将来にわたって手元現金になるもの」か「将来的に費用化されるもの」に分類されます。
工場などの建物や、ソフトウェアなんかも固定資産として計上されます。
流動負債
流動資産とは「1年以内に手元現金の支出になるもの」です。具体的には買掛金や短期借入金などです。
例えば企業間の契約などでは、契約開始月を起点に「月末締めの翌月末払い」などで請求がされると思います。その場合、請求している企業は請求額を流動資産に、請求されている企業は請求額を流動負債に計上することとなります。
固定負債
固定負債とは、「1年以上の期間を超え、手元現金の支出になるもの」に分類されます。例えば社債や長期借入金などがそれにあたります。
期間により流動負債と固定負債に分かれますが、いずれもいつかはお金を支払う義務があるものです。
純資産
純資産とは資産と負債の差分になります。
資産が1億円、負債が5千万円であれば、純資産は5千万円です。
自己資本と他人資本の考え方
負債と純資産はBS上、右側(貸方)に記載されます。
この2つは何が異なるのか考えてみます。
結論から言うと、調達元が他人なのか自己なのかです。
負債には銀行から調達したお金などが含まれており、将来いつか返さなければいけないお金です。そのため他人資本と呼ばれます。
一方で純資産は利益剰余金など純粋に自分たちで調達したお金であり、返す必要がないお金です。そのため自己資本と呼ばれています。
よく経営の安定性を図る指標として自己資本比率が使われます。総資産のうち自己資本がどの程度の割合かというもので、以下の計算式で算出できます。
計算式:自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100