ゲノム編集と投資事情

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ひょんなことからゲノム編集について書きたくなってしまいましたので、今日はゲノム編集をテーマに記事を書きます。勿論、投資ブログなので、特定銘柄についての言及や、最近の投資界隈でのゲノム編集企業への状況についても触れてみようと思います。

先ほど、こんなtweetをしてみました。

ゲノム編集領域について軽く触れるかーと気楽な気持ちで投稿したのですが、少し書いたところで久しぶりにゲノム編集への熱が高まりブログで書くに至りました。

先に言っておきますと私はゲノム編集に関しては素人です。
専門家の方がご覧になられた際に誤りなどあればご指摘いただけますと幸いです。

では本題へ。

ゲノム編集とは

我々、人間を構成する最小の単位は細胞です。
その細胞の中には更に細かな生体物質である「DNA」が含まれます。

ゲノム編集とは、このDNAの特定の位置を狙って切断し編集する技術のことです。遺伝子は傷つくと修復されます。この技術によって、農水畜産物の品種改良や遺伝子治療などに応用することができます。

では他の技術と何が異なるのか。

品種改良を例にしますが、元々は交配による品種改良をしていました。突然変異によって生まれた「病気に強い」や「大きい」や「美味しい」といった人間にとって都合が良い特徴を持つ個体を選別して、交配を繰り返し行うことで理想的な品種を作り出す方法です。

この突然変異を起こすために強い放射線を浴びせたり、DNAを切るという手法がとられました。しかし突然変異が起こる可能性は非常に低く、かつ突然変異が発生しても必ずしも「病気に強い」などの狙った性質を持った個体が生まれるわけではありません。そのため皆、効率の悪さに皆頭を悩ませていました。

しかしゲノム編集においては狙った箇所を切断することが可能です。
例えば病気の原因になる遺伝子のみを切断し続けることで、その遺伝子だけに突然変異を起こすことが可能となります。非常に効率が良いということで、ここ数年はゲノム編集技術が非常に注目されているという状況です。

応用例

特に多く応用されているのは農水畜産物の領域です。
熟成が進む遺伝子を切断して作られた日持ちするトマトや、筋肉量が多い動物など様々な動植物が生まれています。

しかしそれ以上に注目されているのが「遺伝子治療」の領域です。
世の中には様々な遺伝子疾患があります。遺伝子疾患とは遺伝子の異常が原因となって起こる疾患のことです。治療法がない疾患や、生活に支障をきたす疾患も多くあります。

しかしゲノム編集を用いれば、そういった疾患も治療できる可能性が見えてきました。例えば今年の1月に発表された下記研究などもその大きな一歩です。

ゲノム編集を用いた革新的な遺伝子治療による視覚再建

治療方法がない病ほど辛いものはないです。一生付き合わなくてはいけません。しかし遺伝子治療はそれらを解決してくれる可能性を秘めています。


さて、冒頭、農産畜産物で多く応用されていると触れました。
この背景は大きく2点だと認識しています。
一つは食物需要の観点。地球の人口は増加を続けています。全員が十分な食糧を食べるためには、食糧供給量を70%ほど増やす必要があると言われています。
そこで、成長が早く、病気に強い野菜や穀物、家畜が求められています。

二つ目は倫理の観点です。
ゲノム編集技術は特にここ数年で急拡大しました。人間に応用するには倫理的な議論が成熟しておらず、この点への配慮でまずは植物や家畜からスタートしているのだと考えています。(数年前に中国でデザイナーベビーが作られた際には大変な非難が巻き起こりました)

人類の夢

倫理的な課題がある一方で人類の夢の一つが不老不死です。
ゲノム編集技術を応用すれば不老不死に近付くことが可能だと言う説もあります。そのためゲノム編集技術には大変な資金が投資され、様々な研究が繰り広げられているのが現状です。

余談ですが、是非はともかく、我々もここ数十年、認識しないままに不老不死に近付いていることも事実です。

そもそも不老不死を考える上で、不老と不死について別物として分けて考える必要があります。不老とは「老いにくい」という状態変化における程度の話です。若いと老いの相対で判断される事柄です。一方で不死とは「死ぬか死なないか」の「0か1」の話です。全くの別物なので分けて考えます。

まず不老に関してはかなり進んでいます。
現代の40歳と明治時代の40歳を比較すると今の40歳の方が若く見えますよね。美魔女なんて呼ばれる方は最たる例です。食事や普段の生活を気を付けるだけでもかなり老いの進行を防ぐことができます。アンチエイジングの施術を受けた方も多いのではないでしょうか。

しかし、まだ未解明な部分も多く、GoogleはCalicoという企業を設立し15億ドルを投資しました。米国のThe Longevity Fundという不老長寿技術に特化したVCが生まれたり、オラクルの創業者ラリーエリソンや、投資家のピーターティールも不老に関する研究者や団体に寄付をしています。

不死に関してはどうでしょうか。
これもiPS細胞を使えば一定は実現できるかと思います。
内臓の機能が弱まったり不具合が生じた際に、iPS細胞から作った臓器を移植すれば理論上はずっと生きられますよね。ただし、細胞の修復速度を高めることはできないので、突然の事故や、銃で撃たれたりすれば死にます。
なので不死に関しては、将来的には一定実現できるかもしれないが、完全には実現できないと言えるかと思います。

投資先としてのゲノム編集

現在、世界ではゲノム編集技術を用いた研究開発・事業展開をする企業への投資がホットになりつつあります。ゲノム編集企業のみを対象としたファンドも次々と現れています。

ここではいくつかの具体的な企業を紹介します。

eGenesis
世界には200万人もの臓器移植を待つ人々がいますが、供給が圧倒的に不足しています。そこで同社は、ゲノム編集技術を用いて心臓や肝臓、肺などの動物の臓器を人間に移植可能にすることを目指しています。

特に豚は臓器のサイズ的にも生理学的な互換性においても臓器移植に適していると言われています。一方で豚が持っているウイルス感染のリスクが高く実現できていません。ゲノム編集技術で、そのウイルスを作る遺伝子を切除することに成功しています。


Memphis MeatsNew Age Meats
最近、「食糧難」の課題解決や「菜食主義」のニーズに応えるためにBeyond Meatのように代替肉を作る所謂Foodtech企業が増えています。

この2社もFoodteck企業です。
特徴は「培養肉」の製造をしているところです。培養肉とは動物の細胞を組織培養して作られます。 動物を屠殺したり処分する必要がないですし、飼育過程で消費される大量の水や食糧も必要ありません。また、動物を肥育するのと比べて環境負荷が低く、厳密な衛生管理も可能です。これらの培養肉を作るにあたってゲノム編集技術を用いることを発表しています。


モダリス
今年8月3日に上場したばかりの日本企業です。
人の病気は1万種あると言われていますが、そのうち7,000種は患者数が少ない「希少疾患」と呼ばれる病です。そして、この希少疾患7,000種の患者数を全てあわせると合計4億人いるそうです。ちなみに糖尿病の患者数は4億2,500万人で市場規模は8兆円以上と言われています。

一方で、従来の技術では薬の開発には多大な時間をお金がかかりますので、製薬会社の優先順位は患者数が多い病の治療薬です。個別の患者数が少ない希少疾患は後回しになってしまい治療薬が完成しないという現状があります。

モダリスはこの状況に対して、ゲノム編集技術のクリスパーGNDMを用いて取り組みます。従来の技術では遺伝子を切るという方法で編集しますが、同社の技術は切らずに制御する形の技術です。これによる創薬の難易度・コストが低減できる、かつ様々な病気に転用できる治療法を実現できる可能性があるとのことです。


その他、遺伝子治療の領域などで多数の企業が生まれ多額の投資がされています。



この技術は歴史が10数年と浅く、この先どのように発展するか未知数です。人間のエゴとの向き合いも必要ですが、これで助かる人や地球環境が改善される可能性も非常に高く夢に溢れる領域です。

投資先としては少しギャンブル要素の高い領域ではありますが、旧来型の創薬・バイオベンチャーと比較すると確実性が高いのではないかと思っています。


以上です。

もし参考になれば、いつも通り有料note(¥100)を作成しましたので投げ銭的にご購入いただけますと幸いです。

https://note.com/kosu2020/n/nb3b973ed1fd1

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また、ゲノム編集の勉強にあたっては下記書籍がオススメです。

そして、ゲノム解析に関しては天才高橋さんの本がオススメです。

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