こんばんは、Kosukeです。
投資家の皆さんなら誰もが見たことがある”ESG“というキーワード。
なんとなく理解している方は多くても、自信を持って理解していると言える方は少ないのではないでしょうか。実は私もその一人でした。今日はそんなESGが何なのか、投資をする上でどのように理解しておけばいいのか解説します。
ESGについてインプットするにあたり、SDGsについて知っておくと、より理解が深まるかと思いますので、先にSDGsについて説明させてください。もし手っ取り早くESGについて知りたいという場合は目次の5番あたりをクリックしてください。ただ、全部お読み頂くと最近話題のNikolaやTeslaなどとの関連性も見えてきます。
目次
SDGsの概要とMDGsについて

SDGsとはSustinable Development Goalsの略で、エスディージーズと発音します。日本語に訳すと「持続可能な開発目標」です。よく環境面がクローズアップされますが、実は17のゴールと169のターゲットから構成される非常に幅広い目標となります。
まずSDGsの歴史から紐解きます。
産業革命以降、世界では人間の活動が非常に活発になりました。都市開発や生産活動が活発になり、森林伐採、水産資源の乱獲、環境汚染など様々な問題も発生し、このままでは地球は住めなくなってしまうのではないかという疑問が生じました。
そこで2000年にニューヨークで開催された国連ミレニアムサミットにて「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されました。あまり知られていませんが、実はこのMDGsがSDGsの前身となる目標です。
MDGsは8つのゴールを設けらました。そして国連加盟国193カ国と23の国際機関は2015年までに達成に向けた努力をすることに合意します。8つのゴールは以下の通りです。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 普遍的初等教育の達成
- ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
- 幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止
- 環境の持続可能性の確保
- 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
そして目標年の2015年に、国連サミットにてMDGsの後継としてSDGsが採択されます。SDGsはMDGsで未達成に終わった項目に加えて、新たな課題なども目標に掲げられました。結果として、冒頭に記載した通り17個のゴールに増えました。SDGsではこれら17個の目標を2030年までに達成することを目指しています。
MDGsとSDGsでは重要な違いがあります。
MDGsは上述した8つの目標がありましたが、主に途上国で課題とされていることが中心でした。先進国は途上国の課題解決をサポートするという位置付けだったのに対して、SDGsは先進国と途上国に共通の課題として設定されています。
人類が地球に住めなくなれば、どれだけ企業は利益を上げようが、人々が裕福になろうが意味がありません。そのため、全ての国と企業が「地球の存続」「持続可能な開発」を第一に考える。これがSDGsの基本的な考え方です。
下記のような共通の考え方を元に進められています。
理想論が掲げられるのではなく、各国の事情に合わせて柔軟な対応が可能という点も特徴です。
- 地球規模、全ての国に対応が求められる。
- ターゲットは各国政府が定める。その際、地球規模レベルでの目標を踏まえつつ、各国の置かれた状況を念頭に行う。
- 各々の政府は、これら高い目標を掲げるグローバルなターゲットを、具体的な国家計画プロセスや政策、戦略に反映していく。
- 持続可能な開発が経済、社会、環境分野の進行中のプロセスとリンクしていることをよく踏まえておく。
- 最も脆弱な国々が直面している特別な課題とともに、中所得国が直面している特有の課題、 紛争下にある国々も特別な配慮が必要である。
- それぞれの国が置かれた状況及び優先事項により、アプローチ、ビジョン、モデルや利用可能な手段が変わる。
国家間の温度差
素晴らしい取り組みに思えるSDGsにも推進する上での問題があります。
それは罰則規定がないことです。そのため国や企業によって取り組みの度合いに差があります。最も活発に取り組んでいるのは欧州だと言われています。一方で中国や米国は消極的です。
元々、欧州では人々の環境意識が高く、環境や社会にとって優しいということが企業のあるべき姿であると認識されています。ユニリーバなどの欧州企業は環境や社会への配慮を強めるだけではなく、その必要性について普及活動も行っていました。
しかし、これらの取り組みにはコストがかかります。仮に欧州企業だけが真剣にこの取り組みに参加したのであれば、競争力の観点で非常に不利になります。そこで国連に働きかけて国際標準としてのSDGsを策定したという背景もありました。
結果、徐々に人々や企業の意識も変わってきました。
例えば米国では、ビジネスラウンドテーブルという日本でいう経団連的な組織が「株主第一主義からマルチステークホルダー主義に変わる」と宣言しました。米国はずっと株主第一主義が当たり前でした。しかしビジネスラウンドテーブルはマルチステークホルダーについて5つの主なステークホルダーを挙げており、株主は最下位に位置付けられており、世界に衝撃を与えました。それが以下です。
- お客様への価値の提供
- 従業員への投資、還元
- サプライヤーとの公平で倫理的な取引
- 持続的な労働環境の構築
- 株主への長期的な価値の還元
また、日本でも「持続可能な開発目標 (SDGs) 実施指針」を決定し、優先課題として5つのPに取り組むことを表明しています。
- People
1.あらゆる人々の活躍の推進
2.健康・長寿の達成 - Prosperity
1.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
2.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備 - Planet
1.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
2.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全 - Peace
1.平和と安全・安心社会の実現 - Partnership
1.SDGs実施推進の体制と手段
とは言っても、SDGsよりも利益の方が重要度は高いのが現実です。特に米国では業績が悪ければ経営陣もクビになりますし、それによって今後のキャリアも潰れます。また、持続可能な発展は大事ですが、それに注力しすぎると企業が持続できなくなります。要はSDGsと企業利益はトレードオフの関係性になってしまっているのです。
そのため、苦肉の策と言っては語弊があるかもしれませんが、事業の文脈にあうことであればSDGsにも取り組むという事例に閉じてしまっていることが多いです。
SDGs17のゴール
SDGsには17個のゴールがあります。
これは後半で展開する話に非常に密接な関係がありますので、軽くでも覚えておいてください。各ゴールにはいくつかの項目が用意されています。詳しく知りたい方向けに、目標をクリックすればWikipediaに飛ぶように設定しています。
- あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
- 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
- あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
- すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
- すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
- すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
- 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する
- 強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
- 各国内及び各国間の不平等を是正する
- 包摂的で安全かつ強靱で持続可能な都市及び人間居住を実現する
- 持続可能な生産消費形態を確保する
- 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
- 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
- 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
- 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
- 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
各項目、長くて理解しにくい文章なので、下記のロゴで理解することをオススメします笑

こちらの情報を頭の片隅に置いた状態で、最近の企業活動とSDGs、そしてESG投資の話に移ります。
企業活動とCSV
先ほど、SDGsと企業活動はトレードオフであると述べました。
しかし、確実に変わっていると肌で感じることもあります。
今は明らかに環境や社会に悪い製品や活動は非難されるため、企業もかなり気を配るようにしています。個人的には、凄くプラスになったわけではないけれど、大きなマイナスだったものが、少しマイナス程度まで改善したという所感です。
そして何より起業家たちのマインドが大きく変わっています。昔は自分が巨額の富を手にして優雅な生活を送るために起業するという方も多かったかと思います。別に悪いことではないと思いますが、最近は社会課題を解決しながら利益も出すという起業家が非常に多く、そういう人の方がクールであるという風潮もあります。
また、アリババ創業者のジャック・マー氏はこんな言葉を残しています。
商売人は利益だけを考える。
『ジャック・マー アリババの経営哲学』
ビジネスパーソンは状況を見て何をとるか決める。
企業家は社会的責任を負い、価値を作り出し、より良い社会を目指す。
起業の目的、事業の目的は経済的な富ではなく、社会課題の解決や、より良い社会を作る、社会への貢献をするというプロセスにおいて、心理的な満足を得ることに変わってきています。
また、2011年にマイケル・ポーター氏がCSVという概念を提唱しました。CSVとはCreating Shared Valueの略で「企業が事業を営む地域社会や経済環境を改善しながら、自らの競争力を高める方針とその実行」と定義されています。
CSVにおいては、社会的価値と経済的な価値を両立すべきという考えの下、ビジネスを展開するというアプローチをとります。一時期ブームだった社会貢献のみのCSRとは異なります。
ESGとは
ようやく本題のESGの話です。ここまで根気強くお読みいただきましてありがとうございます。
ESGとは、Environment(環境)とSocial(社会)とGovernance(企業統治)の3つを考慮した投資のことです。
・Environment(環境)
CO2排出量削減、海洋・水質汚染の改善、気象変動、再エネなどがテーマ
・Social(社会)
男女平等、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ
・Governance(企業統治)
不祥事の回避、リスク管理のための情報開示や法令順守などがテーマ
ESGはここ最近、かなり重要視されていますが、その背景には短期的な利益を追求したことへの反省があります。
環境を無視した経済活動によって、米国では大型ハリケーンのカトリーナによる大規模な被害があったり、日本においても年々、台風の威力が強まり甚大な被害が発生しています。
また、利益を優先して不当な条件で労働契約を結んだり、特定の人種や性別への差別、経営陣の不祥事や法律を無視した企業活動などが相次ぎ、このままでは持続可能な経済活動ができないと気付きました。
そこで、ESGの3つの観点から、企業を評価・分析して、それら3つの観点で優れた企業に投資をしようとするのがESG投資です。先ほどSDGsと企業の利益はトレードオフだと話しましたが、ESGはその点で異なります。
ESGは企業の長期的な成長に影響する要素という考え方をしています。企業がESGを意識して事業活動を行うことで利益にも繋がるし、SDGsの目標達成にも近付くという捉え方をしています。
ESGとGPIF
そもそもの投資の原点に立ち戻ると、投資とは企業に資本を預けて、企業が成長することにより、インカム・キャピタルゲインを受け取るというものです。
つまり環境や社会にとってサスティナブルでないと、企業の収益が落ちることは必然で、そうなると投資リターンも得られなくなります。
極端な例ですが、毎年魚を乱獲する企業は、短期的には業績が良いですが、そのうち魚がいなくなるので業績が落ちます。もしくは不当な低賃金で雇用している企業は、短期的には高利益を出しますが、従業員の離反、モチベーション低下などにより業績は悪化します。
それよりも毎年、決まった漁獲量で水産資源を守りながら長期間利益を出し続けてくれる企業や、従業員が長く幸せにモチベーション高く働いていて業績が上がり続ける会社の方が投資リターンが高いという訳です。
特にこういった投資方法に相性が良いのが年金を運用する機関です。こういった機関は年金制度を数世代先にも持続させることを目的として作られています。例えば日本のGPIFは150兆円以上のお金を運用して、運用益を年金の財源にまわしています。
そうすると超長期の目線で投資をすることになります。短期的な企業の利益なんてどうでも良くて、数十年〜百数十年単位での投資となりますので、ESG投資とは非常に相性がいいです。実際、GPIFは2015年にPRIに署名して、2017年からESG投資を開始しました。
▼GPIFによるESG投資に関するレポート
2019年度 ESG活動報告
世界のESG投資額の推移
GPIFのような超大型機関を始め、世界中でESG投資が非常に活況です。では世界でどの程度の投資額が増えているのか。

わずか2年間で世界全体のESG投資額は34%増加しまして、30兆6,830億ドル(約3,418兆円)になりました。ちなみに過去の成長率は、2012年から2014年が61%成長、2014年から2016年が11.9%成長です。特に日本とカナダの成長が著しいですね。
次にESG投資が全体に占める割合です。

ここでも特筆すべきは日本の伸び率でしょうか。2017年からGPIFがESG投資を開始したこともあり急激に伸びています。逆に欧州は絶対額は増えていますが、割合が落ちているのが気になります。
要は、世界中でESG投資が非常に盛んであり、その傾向は今後も続くのではないかと思われます。
ESG投資における銘柄選定方法
ここまでお読み頂きましてESG投資とは環境、社会、統治に関する銘柄を買ってるということはご理解いただけたかと思います。ではESG投資するにあたって機関はどうやって銘柄選定をしているのでしょうか。GSIAが7つのスクリーニング方法に分類してまとめています。
ネガティブ・スクリーニング
環境破壊や反倫理に関連する企業や業界を投資対象から除外します。
武器・たばこ・ポルノ・ギャンブル・アルコール・原子力発電・動物実験・化石燃料などがそれにあたります。
ポジティブ・スクリーニング
ESG評価が高かった企業・銘柄を選別して投資するものです。ESG評価は環境や人権・従業員対応、ダイバーシティなどの基準を設置し、総合的に見てスコアが高いものが選ばれています。
規範に基づくスクリーニング
ESG分野における国際規範を元に、基準に達しない企業や債権を投資対象から除外する方法です。国際規範は、OECDが定める規範やILO(国際労働機関)が定める児童労働や強制労働といった規範などです。
ESGインテグレーション型
財務情報に加えて非財務であるESG情報も加味して分析する方法です。長期投資目的の資金を運用するファンドなどが競争力を測る上で活用するケースが多くなっています。特定のものを排除・選定するのではなく、総合評価をしているのがポイントです。
サステナビリティ・テーマ投資型
再生可能エネルギーや持続可能な農業、エコファンド・水ファンド・太陽光発電事業など、サステナビリティをテーマにした投資方法です。
インパクト投資型
社会や環境に良い技術・サービスを提供する企業に投資する方法です。非上場企業への投資が多く、ベンチャーキャピタルがファンド運用を行っているケースも多く見られます。
エンゲージメント・議決権行使型
これだけ少し毛色が異なります。投資機関は株主として企業のESGに積極的に働きかけます。時には株主総会で議決権を行使し、企業の意思決定に影響を与えます。
以上の7つです。
ではどの手法が最もよく活用されているのか。金額ベースで分類したものが下記です。

ネガティブ・スクリーニングとESGインテグレーション型が良く使われているようですね。皆さんの保有銘柄にネガティブ・スクリーニングで除外されてしまう銘柄はありませんか?
ESG・SDGsに関する勉強
ここまでお読み頂きまして、もっとESG投資やSDGsについて知りたいと思われた方は下記書籍がオススメです。投資だけではなく今後はビジネスにおいても非常に重要なテーマとなりますので、この機会にどれか本をお読み頂ければと思います。
▼SDGs
▼EGS
以上です。
今回のSDGs、ESGのテーマは今後も非常に重要になってくるかと思います。
そのため有料noteの販売などはしません。(無料note作成予定)
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のいずれかを頂けますと幸いですm(_ _)m